あなたがタバコを吸わない非喫煙者だとしても、家族や友人、同僚に喫煙者がいたら、タバコの有害物質を吸い込んでいるといっても過言ではありません。実は分煙をしていても健康被害を受けているのをご存知でしたか?
今回、禁煙外来の医師・村松弘康先生に、受動喫煙による深刻な被害や禁煙治療についてお話を伺いました。

受動喫煙によって年間1万5000人が死亡

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人が吐き出したタバコの煙(呼出煙)や、タバコの先から出る副流煙など、自分の意思とは関係なくタバコの煙を吸わされてしまうことを「受動喫煙」といいます。受動喫煙による日本の推計死亡者数は、なんと年間約1万5000人。受動喫煙によって引き起こされる健康被害は、肺がんや心筋梗塞以外にも脳卒中、糖尿病、呼吸器感染症、喘息発作、SIDS(乳幼児突然死症候群)などさまざまな病気に及びます。

主流煙と副流煙の違い

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タバコの煙には、約4000種類の化学物質と約70種類以上の発がん物質を含んでおり、その中でも代表的な有害物質が「ニコチン」と「タール」と「一酸化炭素」です。タバコの先から出ている副流煙はフィルターを通していないため、主流煙よりもずっと多くの有害物質が含まれています。

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主流煙よりも副流煙の方が・・・

ニコチンの量  → 約2.8倍
タールの量  → 約3.4倍
一酸化炭素の量 → 約4.7倍

実はタバコの煙の中には、「PM2.5」も含まれています。これは中国から飛来する大気汚染物質として社会問題になっている有害物質です。PM2.5は髪の毛の太さの約1/30と血管の中にまで入り込んでしまう微小粒子で、虚血性心疾患、不整脈、急性心筋梗塞などを引き起こすと言われています。
環境省の基準ではPM2.5の1日平均の濃度は、1㎡あたり35μg(マイクログラム)以下と定められており、70μgを越えると「なるべく外出を控えるように」と注意喚起が出されます。
中国の北京市ではなんと日本の基準の約10倍、一日平均350μgという恐ろしい数値が検出されていますが、日本でも喫煙可能なカフェや居酒屋といった空間では、北京市を越えるPM2.5濃度数値が検出されていることはあまり認知されていません。特に飲食店で働いている方は、ご自身がタバコを吸っていなくても長時間喫煙スペースにいることで、大きな健康被害を受けていることになります。

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分煙しても意味がない「三次喫煙」の被害

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タバコの煙は髪や衣服、カーテンやソファー、部屋の壁紙などに染み込みます。こうしたものからタバコの有害物質を吸い込んでしまうことを「三次喫煙」と言います。
換気扇の下やベランダでタバコを吸っていたとしても、有害物質は部屋に拡散されています。吸い終わってから約30分は吸った人の息からタバコの有害物質が出続けているからです。煙が目に見えていなくても、喫煙者のそばにいる人は健康被害を受けていると言えるでしょう。それが小さいお子さんともなると、大人以上に深刻な被害になります。

【受動喫煙によっておこる子供の病気の例】
・中耳炎
・気管支炎
・呼吸器感染症
・身体発育の低下
・言語能力の低下
・小児がん
etc……

【受動喫煙によっておこる妊婦や新生児への影響】
・流産や早産
・SIDS(乳幼児突然死症候群)
・新生児の将来の肥満、糖尿病
etc……

禁煙外来治療で成功率がアップ

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ニコチン依存症から自力で抜け出すのはとても難しいことです。タバコを吸って2~3時間経過すると体内にあるニコチンが切れてきてイライラします。禁煙外来では問診やニコチン依存度テストなどをおこなってから12週間にわたり5回の診察を受けていただき、ニコチンパッチや飲み薬で禁断症状を抑えながら、禁煙習慣を取り除いていきます。
一人でおこなう禁煙の成功率は1割程度と言われていますが、禁煙外来を受診していただくと成功率が7~8割まで上がります。
禁煙外来は一定の条件を満たせば、健康保険で治療を受けられます。保険料3割負担の方でしたら診察・お薬代を合わせても1日たった230円。3カ月で2万円弱の費用です。今、タバコの値段がおよそ480円ですからタバコ3カ月分よりも安く受診することができます。禁煙外来の所在地はインターネットで検索いただくか、お住まいの市区町村にお問い合わせください。

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村松弘康(むらまつ・ひろやす)

村松弘康(むらまつ・ひろやす)

平成元年に東京慈恵会医科大学を卒業。同大学呼吸器内科へ入局。国立国際医療研究センター呼吸器科、同愛記念病院アレルギー・呼吸器科などに勤務。主に喘息、アレルギー、COPD等の診療・研究に従事し医学博士号を取得。睡眠時無呼吸症候群外来や禁煙外来にも力を注いでいる。

平成16年~東京慈恵会医科大学講師(現在、非常勤講師)
平成20年~武蔵野大学客員教授
平成23年~中央内科クリニック院長

※本記事の情報は特定の医師や医療機関への受診を推奨するものではありません。医師や医療機関へ受診はご自身の判断で慎重に行って下さい。